Mukai Systems

コンピュータの神が神について語る——「コンピュータ科学者がめったに語らないこと」

「コンピュータの神」であるクヌースが、「神について語る」だと!?

書店で偶然出会った本書を、見つけた瞬間に買ってしまった。全体を通してみて、キリスト教の教養がなかったためにそこまで楽しむことができなかったが、いくつか面白い発見もあり買ってよかった。

印象的だった回を二つ紹介したい。

ランダム化と宗教

特定の問題には、ランダム化が強力な解法になりうる事が書いてあった。

一方で、ランダムなものに無理やり意味を見出す危険性にも言及している。聖書を数学の本として読もうといった試みがあり、例えば、「暗号化されたビル・ゲイツの言及を黙示禄から見つけた」とか。

あまりにも多くの文章から容易に意味のありそうな数値パターンを見出すことができるため、こういった試みは何ら意味がない。

シェイクスピアやバッハの作品に対してもそのような試みがなされていることが紹介されている。信念やアイデアから始めて、その概念を裏付ける証拠を探し始める場合には、このような罠にハマらないように特に気を付けなければならない。

神とコンピュータ

この回ではクヌースのartという単語へのこだわりが垣間見れる。

数年前、私は"science"(科学)と"art"(芸術)の違いについてあれこれ考えていました。本の題名をどうしてThe Science of Comupter Programmingではなく、The Art of Comupter Programmingとしたのかと人から問われ、単純な説明の仕方のあることに気がつきました。すなわち、科学は、コンピュータに説明できるくらい私たちがよく理解していることであり、芸術はそれ以外のすべてなのです。

(中略)

科学が進歩するたび、芸術の一部が科学となって、芸術はその分少し減るはずですよね。ところが不思議なことに、芸術は、常に純利益を計上するようです。それは、私たちが多くのことを理解すればするほど、コンピュータには説明できない何か新しいことをもっと作り出すからです。