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ペンローズ博士が追い求めていたもの――「ペンローズの幾何学」

Description

特定の種類の図形を用いて隙間なく平面を敷き詰める行為を「平面充填」という。本書は、平面充填を一般人向けに解説した本である。

周期的な平面充填

例えば、正方形や正三角形を用いて平面充填できるということは容易に想像できるだろう。これらの図形によって充填された平面は平行移動によって元の平面と一致させることができる。これを「周期的な平面充填」という。

非周期的な平面充填

数学者にとっては「周期的ではない平面充填」ができるのかということが興味の対象であった。

初めて非周期な平面充填問題が解かれたのは1964年のことである。このとき用いられた図形の種類は、なんと2万425種類であった。これを皮切りに、様々な解が発見されていくことになる。Wikipediaによると、Knuth先生も92種類からなるタイルを発見している!

1974年には、たった2種類の図形によって非周期な平面充填問題が解かれた。これを発見者である「ロジャーペンローズ」にちなんでペンローズタイルと名づけられた。

VarPenrT

Ael 2 at English Wikipedia, Public domain, via Wikimedia Commons

2種類まで絞れたのだから、1種類のタイルによって非周期的な平面充填ができるのかが関心事になる。そのようなタイルは、「アインシュタインタイル」といい、多くの人々によって探されてきた。これは、ドイツ語で「一つの石」を意味する「ein stein」が由来となっている。

2023年、ペンローズタイルの発見から50年近くの月日を経て、とうとう、David Smithによってアインシュタインタイルが発見されたのだ!

Aperiodic monotile tiling

David Smith, Joseph Samuel Myers, Craig S. Kaplan, and Chaim Goodman-Strauss, 2023, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

正三角形と正六角形の格子を背景にすると、とても美しい構造をしていることが確認できる。

Smith aperiodic monotiling

Cmglee, CC BY-SA 4.0 <https://creativecommons.org/licenses/by-sa/4.0>, via Wikimedia Commons

Conclusion

数学者の楽しみとして発展してきた側面が強い平面充填の世界だが、実は美術や科学の分野とも関係がある。本書ではエッシャーの絵画や、自然界の結晶構造との関係についても言及されている。

アインシュタインタイルをはじめとして、この分野は数学者ではない一般人の人による貢献も大きく、門戸が広いのが特徴だ。あなたも自分だけのタイルを探してみてはいかがだろうか。

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