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事実をもとに物事を判断しよう——「FACTFULNESS」

著者は世界の経済状態や平均寿命率などについての質問を、様々な国の様々な分野で活躍する人たち——医学生、教師、大学教授、科学者、ジャーナリスト等——に行ってきた。残念なことに、その正答率は無作為に回答するよりも低いものだった。このことから、筆者は「人間の脳はこの手の問題を錯覚しやすいのではないか」という仮説を立てる。本書は、この手の錯覚は人間の本能によるものとして、解説したものである。

ネガティブ本能「世界はどんどん悪くなっている」という思い込み

本書の中からネガティブ本能を紹介しよう。この章は次の質問から始まる。

次のうち最も近い考え選んでください。

A 世界はどんどん良くなっている

B 世界はどんどん悪くなっている

C 世界は変わっていない

ほとんどすべての人はBまたはCを選択する一方で、この正解はAであるらしい。その理由として「世界の平均寿命」とか「極度の貧困にある人の割合」とか「ギターの所持数」などの推移を提示する。

確かに平均寿命は上がっているし、最貧困層の割合も減っているし、ギターの所持数も上がっているのかもしれないけど「世界がよくなっている」と主張するにはあまりにも飛躍していない?

逆に、これらを世界の良さの指標としたときに、世界が悪くなっているような指標もあると思うんだけど。

例えば、OECD主要国のジニ係数の推移とか。

ちょっと懐疑的すぎかもしれないけど、データから「世界が良くなっている」という判断をしたのではなく、「世界が良くなっている」という主張のためにデータを集めたのではないかと疑ってしまう。

総評

こんな調子で本能に対して、データを提示した上で「事実をもと(ファクトフル)に物事を判断すべきだ」という主張が行われる。

言いたいことはわかるが、全体的に少し主語が大きいと言わざるを得ないというのが正直な感想である。とはいえ、本書で示される個々のデータは予想に反するものばかりであったことは事実なので、気になった人は一読してみてほしい。

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