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Googleではどのような人事が行われているのか——「WORK RULES!」

Description

Google Chromeに、Gmailに、Google Mapに…。今日において、Googleは我々の重要な生活基盤の一部である。このようなプロダクトを世に送り出してきた会社では、いったいどのような人事が行われているのか気になりはしないだろうか。本書は、元Googleの人事部門トップであるLaszlo Bockによって書かれた、Googleの人事についての本である。

マネージャーについて

人が会社をやめる一番の理由は報酬の問題というよりは、人間関係である。という調査結果をどこかで読んだことがあるが、Googleも例外ではないのだろう。

社員は会社を辞めるのではなく、ダメなマネージャーと働くのをやめる。

P309

かつて、Googleのエンジニアはマネージャーは重要でないと固く信じていた。

「マネージャーはたいていは自分の邪魔をして官僚主義を生み出し、物事を台無しにするだけさ。」

このような考えが根強かったのだろう。Googleは2002年にマネージャー職を廃止することになる。

その結果どうなったのだろうか。なんと、廃止から6週間足らずでこの試みは失敗に終わったのだ!

この試みの失敗後、マネージャーは重要ではないと証明するために大規模な調査を行うことになる。その結果は、皮肉にも正反対の事実を示すことになってしまった。マネージャーは業務を円滑に進めるために極めて重要な存在だったのだ! この調査の結果によって、よいマネージャーは以下のような性質を持つことが分かった。

  1. 良いコーチであること。
  2. チームに権限を委譲し、マイクロマネジメントをしないこと。
  3. チームのメンバーの成功や満足度に高い関心や気遣いを示すこと。
  4. 生産性/成果志向であること。
  5. コミュニケーションは円滑に。話を聞き、情報は共有すること。
  6. チームのメンバーのキャリア開発を支援すること。
  7. チームに対して明確な構想/戦略を持つこと。
  8. チームに助言できるだけの重要な技術スキルを持っていること。

P312

今日では「クリエィティブな職場においてマイクロマネジメントは悪である。」ということは広く周知されているように思うが、この調査が原典なのかもしれない。

採用について

上司による指示によって部下が行動するような職場では、「自分より優秀な部下と働きたくない」と思っている上司は、それなりにいるのかもしれない。

Googleはその逆の思想——自分より優秀な社員を雇え!——を掲げている。これは、Googleでは誰かの指示によってではなく、主体的に行動することが求められていることを暗に示している。この思想に従えば再帰的に優秀な人が採用されていくので、会社は自然と優秀な人の集まりになり、したがって、勝手に大きく成長するのだろう。

一つ注意しないといけないのは、ただ優秀なだけでは採用しないということだ。Googleはチームワークを大事にしているので協調性のない人は採用されない。

「彼はきわめて優秀な人材です——技術面接の得点はとても高く、きわめて明敏であり、採用される資格は十分あります——しかし、ひどく傲慢で、自分のチームに加えたがる面接者はいません。優秀な受験者ですが、グーグルには向きません。」

P183

報酬について

Googleは、優秀な人しか採用しないために、組織の中の人の成績は正規分布するわけではない。にもかかわらず、非常に優秀な極少数の社員によって大きな仕事がなされるという。

Googleはこの事実を大事にしていて、そのような社員には不公平にとても高い報酬を与えるのだという。多くの会社においても同じような傾向が観測されるにもかかわらず、それに見合った報酬を与える会社は少ない。

最も優秀な社員の扱いも面白いが、最も成績の低い社員の扱いも面白い。

著者が以前在籍していたGEでは、最も成績の悪い社員を定期的に解雇していたらしい! 対照的に、Googleでは底辺であることを本人に通知して教育の機会を与える。伸びしろがあると考えているのだ。

採用時に優秀な社員しか雇っていないため、教育の機会を与えることよって大幅に改善することも少なくないらしい。最底辺の社員が平均的な社員くらいの成績を納められるようになることもあるようで、採用の手間を考えれば解雇するよりもよっぽど優れた戦略のように思える。

Conclusion

本書をとおして、Googleではあらゆる意思決定が科学的な過程——つまり、仮説、検証、分析、そして考察——に乗っ取っていることがよくわかる。

その姿勢は徹底していて、採用基準にそぐわない人をあえて雇って経過を観察し、採用基準のテストを行うという逸話すらあった。人事というのは、その性質上どうしても定量的に扱うことが困難であるが、計測が困難だからといって諦めない姿勢はとても勉強になる。

さらに、Googleの人事が優れていると主張するだけではない点が素晴らしい。後半では、透明性や言論の自由などの引き換えとして、社内で起きた揉め事などについても述べられている。

どのような環境で、我々の生活基盤となるようなプロダクトが生まれているのか知ることができて大変勉強になった。

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