Mukai Systems

デンマーク人の働き方——「デンマーク人はなぜ4時に帰っても成果を出せるのか」

Description

本書は、2009年からデンマークに移住している日本人によって書かれた、デンマーク人の働き方についての本である。

午前8時から9時頃、淹れたてのコーヒー1杯とともに軽やかに仕事を開始したかと思うと、午後4時頃、すでにオフィスから姿を消している。

これは、この国では「あるある」の光景だ。

P3

人口は千葉県未満で、国土の面積は九州程度。「世界一幸せな国」で有名な一方で、国際競争力が2年連続1位という実績もあるデンマークでは、いったいどんな働き方がされているのだろうか。

なぜ成果が出せるの?

本書のタイトルだけ見るとデンマーク人は特別すごいのか。なんて思ってしまうが、実際はそんなことはない。週に37時間労働が一般的と述べられているように、長時間労働をしていないのは事実だが、極端に労働時間が短いわけではない。別の日で埋め合わせをしていたり、9時から4時以外にも自宅で働いているようだ。

では、何がデンマーク人を生産的にするのだろうか。ここでは二つだけ紹介したい。

第一の特徴として、デンマーク人はマイクロマネジメント——上司が部下を管理しすぎない——を行わない。以下の引用は、日本が大好きな映画監督への取材の一場面だ。

「ひとつのことを進めるのに、いろんな人の許可が必要で、ものすごいプロセスを踏まなきゃいけない。最終決定までに何人もの許可が必要なこともある。だから、なかなか物事が前に進まない。日本人の労働時間は長いというけれど、いちいちこんなに細かい手続きを踏んでいたら、それは労働時間が長くなるに決まっている、と思ったよ。」

P89

こんなことをしていたら生産的な訳がなかろう。残念ながらこれが一般的な日本人の働き方なのは多くの人が同意するところだろう。日本と仕事をするのは面倒だと言われてしまっても仕方がない。対照的に、デンマークでは上司はいちいち部下に干渉しないので、担当者の一存で意思決定が行われる。

第二の特徴として、デンマーク人はプラグマティズム(実用主義)である。それがたとえ上司からの指示であっても、意味のないことをやらせることは困難だ。

「僕が新しいプロジェクトの提案をすると、部下が最初に質問することは『それ、何のためにするのですか?』だよ。僕がちゃんとプロジェクトの目的や意味を説明できなければ、すぐに質問攻撃にあう」

P189

無意味な仕事は誰だってやる気が起きない。意味を見出した仕事であるからこそ生産的に働く事ができるのだ。

Conclusion

本書では、ほかにもたくさんデンマーク人の働き方について特徴が述べられているのだけれど、読み進めるにつれて、何か特別なことがあるのではなく、デンマーク人の働き方はただ合理的なのだということがわかるだろう。非生産的なことを行わないので勝手に生産的になるしかないのだ。

マイクロマネジメントを行わない、管理職と非管理職の垣根が少ない等、本書で述べられる少なくない項目が以前読んだMicrosoftとGoogleについての本で述べられていたそれと一致している事に気が付いた。これは単なる偶然なのではなく、これらの特徴こそが真に生産性の鍵なのだろうと最近は思っている。

More info

See also