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ルネサンスの巨匠——「レオナルド・ダ・ヴィンチ」

レオナルド・ダ・ヴィンチと言えば、世界で最も有名な絵画である「モナ・リザ」の作者としてよく知られているが、彼の功績は芸術だけにとどまらない。万能の天才と呼ばれるレオナルドは絵画、彫刻、建築学、光学、生物学、解剖学、機械工学など様々な分野にわたって大量のメモを残している。本書はそれらのメモ7200ページを読破した著者がレオナルドについて語ったものである。

ニュートンの運動の法則の一部や、ホイヘンスの原理として知られる波の回析現象、心臓の渦血流のスケッチなど、レオナルドのノートには数世紀先に定式化される事柄について記載されていることが少なくなかった。さらに、ノアの箱舟によって山に化石が運ばれたなどという理論に対して、一度の運搬で地層が層状になることはありえないといった優れた考察や、主流だった天動説に対して、「太陽は動かない」といった地動説ともとれるメモも残っており、当時の宗教観に惑わされない科学的な態度は、近代科学の父といわれるガリレオのようだ。他にも発明家としての側面もあり、ヘリコプターや潜水艦、装甲車などの先進的なアイディアもたくさん残っている。ただし、彼は名声に興味がなかったためか、これらの知見は生前に公に発表されることはなかった。

他にも、「モナ・リザ」や「最後の晩餐」などの有名な絵画の逸話や、鑑賞の助けになるような小話も満載である。文章だけではなく、レオナルドのメモや絵画が挿絵として挿入されているのも嬉しい。

そんなレオナルドが最後に書いたとされるノートには、直角三角形の面積についての考察が書かれている。死の直前まで知的探求心に突き動かされていたことが分かる。印象的な一言とともに、彼の最後のメモは終わるのであった。

「スープが冷めてしまうから」

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