誤った意思決定はどのようにして行われるのか——「ファスト&フロー」
Description
我々は日々の生活の中で、無意識のうちに大量の意思決定を行っている。ところが、特定の状況下においては、高確率で合理的ではない意思決定が行われることが分かっている。
本書は、誤った意思決定はどのような状況で行われるのか、ノーベル経済学賞を受賞したダニエル・カーネマンによって書かれた本である。
本書は大きく三つの話題からなる。
- 早い思考と遅い思考
- エコンとヒューマン
- 経験する自己と記憶する自己
最初の二つについて簡単に紹介したい。
早い思考と遅い思考
人には早い思考と遅い思考があり、様々な意思決定はこの二つの思考によって説明できるのだと言う。本書のタイトルはここから来ているのだろう。
本書では早い思考をシステム1の思考、遅い思考をシステム2の思考と呼んでいる。
システム1の特徴についていくつか紹介する。
- 自動的かつ高速に機能する。
- 努力はほとんど伴わない。
- 主体的にコントロールする感覚はない。
- 適切な訓練を積めば、専門技能を磨き、それに基づく反応や直感を形成できる。
- 認知が容易なとき、真実だと錯覚し、心地よく感じ、警戒を解く。
- 因果関係や意思の存在を推定したり、発明したりする。
- 信じたことを裏付けしようとするバイアスがある。(確証バイアス)
- 感情的な印象ですべてを評価しようとする。(ハロー効果)
- 難しい質問を簡単な質問に置き換える。
私たちの考える「自分自身」とは、システム2のことである。システム2の主な機能の一つはシステム1が提案した考えや行動を監視して制御することである。
有名な問題なのでご存じの方も多いかもしれないが、以下の問題を考えてみてほしい。
バットとボールは合わせて1ドル10セントです。
バットはボールより1ドル高いです。
ではボールはいくらでしょう?
この問題に対して、多くの人がシステム1が優位に働いてしまい、10セントという誤った答えを導いてしまうのだという。この問題はシステム2が働いていれば容易に解けるのにもかかわらず、多くの人はシステム2を動作させる認知的負荷を嫌う。認知が容易な問題は、システム1が働きやすいという例だ。
エコンとヒューマン
合理的な選択しか行わないエコンに対して、必ずしも合理的な選択を行うとは限らないヒューマンというモデルを仮定する。伝統的な経済学では、人間はエコンのように振る舞うという仮定で理論が構築されてきたが、どうやら、ヒューマンと仮定しないと説明がつかない事象が沢山あるよねっていう話。今日では行動経済学と呼ばれている学問だ。
Conclusion
タイトルから、早い思考と遅い思考という話題に終始するのかと勝手に思っていたけど、他にも二つの理論が紹介されていてちょっと戸惑った。全体的に面白かったけど、発展途上というか、もう少し体系的に理論を構築する余地があるような気がする。
同系統の本としてはダン アリエリーの予想どおりに不合理の方がまとまってて好きかなー。
返し読みする機会があればそっちも記事にしたい。